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美星天文台と彗星のコラージュ
天文台と彗星のコラージュ

高見島隕石のこと

 私がまだ高校生だったときのことです。夕食を終えたころ、部屋の窓がとつぜん明るく光り、しばらくして突き上げるような揺れがやってきました。
 空が光って地面が揺れる。これは隕石の落下に違いないと判断した私は、星仲間の家にバイクを走らせました。情報を求めてつけたラジオは、呑気なことにUFO目撃談として伝えています。
 この日は曇り空だったため、夜空にカメラを向けていた天文ファンは皆無と思われました。私たちはとりあえず、大流星の後に降ってくるという流星塵を採集するため、粘着剤を塗ったガラス板を屋根の上に並べてその日は解散しました。
 同じころ鴨方町の竹林寺山天文台(岡山天体物理観測所)では問い合わせの電話が鳴り続けていたといいます。その後の調査でわかったことは、この隕石が北から飛来して、井原市の上空50キロの高度で発光、その後竹林寺山天文台の上空を通って瀬戸内海に抜け、香川県の高見島近辺で海中に没したということです。
 国内でこれほどの規模の隕石落下は記録が無く、もし見つかれば貴重な研究材料となります。多くの専門家が現地を訪れ、網で海底をさらったり、ダイバーを潜らせたり、果ては海底調査艇まで登場するという探索が何度も繰り返されましたが、残念なことに発見にはいたりませんでした。
 あれからちょうど30年が過ぎました。総重量1トン以上とも推定される巨大隕石が、備讃瀬戸の海底で、今もじっと眠り続けているのです。

 案内役 美星天文台指導員 中内  弘 (2005年11月掲載)