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よくあるビッグバンのイメージ
実際は外から見ることはできない



ビッグバン 空間と時間の始まり

 宇宙論における「宇宙」とは、すべての空間と時間、すなわち時空全体を意味します。前後、左右、上下に広がる空間と、過去から未来に延びる時間をひっくるめたものが「宇宙」ということです。
 「宇宙」という言葉が古代中国でつくられたとき、「宇」はどこまでも続く空間、「宙」がどこまでも続く時間という意味だったそうです。その時代に、現代物理学と同じ様に空間と時間を一体のものとして考えていたことには驚かされます。
 かつては、空間も時間もどこまでも続くと考えられ、ともに「無限」という言葉で表されていました。しかし現代では、宇宙はビッグバンに始まり、今も膨張を続けているということが定説となっています。当初は反発も多かった「ビッグバン理論」も、観測技術の発達で次々と証拠が見つかってきた結果、今では小学生でも知っている言葉になりました。
 しかしながら、「宇宙のはじまり」や「宇宙の膨張」など、われわれの生活感覚からあまりにもかけ離れた現象を正しく理解することはほとんど不可能なことにも思われます。
 ビッグバンという現象そのものも、ビジュアル重視の図鑑では、必ずといってよいほど大爆発のイラストが掲載されていますが、これはかなり苦しい表現なのです。ビッグバンは打ち上げ花火のように、光や物質が四散するのではなく、宇宙空間そのものが大きくなっていくことだからです。つまりビッグバンは、その名が示すような「爆発」ですらありません。われわれはまだ、ビッグバンを表現する手段を持ち合わせていないのです。




案内役 美星天文台技師 中内 弘(2018年9月掲載)