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道祖の竜
2
 ところが、ある冬の夜、和尚がいつものようにお経をとなえていると、
かわいらしい稚児ちご(こども)がすわっていました。和尚は、その稚児を
にらみつけ、
 「おまえはいったい何者だ。私をだまして、お経をさまたげようとする
あやしい者め、すぐに正体しょうたいをあらわさないと許さないぞ。」
と言いました。すると稚児は、
 「お坊さんの目のするどさには、いまさらながらおそれいりました。
何をかくしましょう、私はこの池に住むりゅうでございます。
 しかし、私にとって池の底は、一生住むところではありません。もし、
願いがかなえられれば、天の龍王のもとでくらしたいと願っています。
しかし、私の神通力じんつうりきはおとろえてしまい、雲を呼んでも雲はおこらず、
風を呼んでも風は吹かず困っています。そこで、あなたのような徳の
高いお坊さんにお願いし、もとの神通力を返してほしいのでございます。
そして、天にのぼるのぞみをとげさせていただきたいのです。そうすれば、
おん返しに、この池をまたたくまに切り開いて、秋には黄金こがね稲穂いなほ
みのるりっぱな田にしてみせましょう。」
と言って頭をさげました。和尚は、そのまじめなすがたを見て、
 「ではあすの夜、龍の正体をあらわしてみよ。そうすれば、おまえの
願いをかなえてやろう。」
と言いました。男の子はたいへん喜んで姿を消しました。