今からおよそ400年ほどむかしのことです。
水野
(
みずの
)
勝成
(
かつなり
)
という
殿様
(
とのさま
)
が、
まだ若かったころ、わけがあって自分の国にいられなくなり、よその
国へ逃げだしました。
追手
(
おって
)
をのがれるために、とうとう、ものもらい
にまですがたを変え、一
軒
(
けん
)
のお堂をいっときの
住
(
す
)
まいとしてかくれて
いました。
若い殿様なので、仕事をして金をもうけることもできず、食べるのに
こまるありさまでした。それを見かねた二人の
家来
(
けらい
)
、
武兵衛
(
ぶへえ
)
と
外記
(
げき
)
は、
同じものもらいになって、なんとかして、殿様の食べものを手に入れ
ようと、近くの家々をたずね歩き、食べ残しのめしをもらってきては、
うえをしのいでいました。