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でんぐら堂ものがたり
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 ある晴れた秋の日、若い家来の外記は、あちこちの百姓家ひゃくしょうやをたずね
歩いていました。しかし、どの家も米のとり入れでいそがしくて、まったく
相手にされず、追いはらわれるしまつでした。そのうち、ある百姓家で、
気のよさそうなむすめが、
 「この先の、長右衛門ちょうえもんさん方で、こないだ法事があったから、ひょっと
したら残りものがあるかもしれん。」
と、そっと教えてくれました。外記は、喜びいさんで長右衛門の家へかけ
つけました。そして、
 「残りものがあったらくださらんか。」
と、いっしょうけんめいにたのみました。かわいそうに思ったこの家のめし
つかいが、法事の残りものを持ってきて、外記のわれなべに入れてくれ
ました。なにしろ、三日ほど前の残りものなので、くさったようなすっぱい
においが、ぷんぷん鼻をつきました。しかし、主君しゅくんを思う外記は、そんな
ことは気にしてはいられません。急いで殿様のいるお堂へかけもどり
ました。