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でんぐら堂ものがたり
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 二人の家来は、やっとお堂にたどりつきました。お堂の中をのぞ
くと、若殿は、きちんとすわったままです。あのほし飯は、もったい
ないことに、大雨でとばされたり、流されたりで、砂か飯か見わけ
がつきません。武兵衛は、お堂の前にひれふして、
 「あっぱれ若殿、ものごとに動じない武士のたいど。ほとほと感心
しました。」
と、言いました。はじめは、ただふしぎに思っていた外記も、やっと
若殿をほめた武兵衛の気持ちがわかりました。若殿は、二人の家
来を見て、にっこりわらい、
 「武兵衛よ、外記よ、帰ってくるのがおそかったぞ。さっきの大雨で
飯つぶがちり、でんぐらでんぐら流されるようすは、まるで、いくさを
しているようであった。これで、また一つ新しいいくさのしかたを見つ
けたぞ。」
と言いました。それからのち、村人たちは、このお堂を「でんぐら堂」
と呼ぶようになりました。水野勝成は、後に関ヶ原の戦いで、大手
がらをたて、福山十万石の城主となりました。