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摺り袈裟と狐
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 やがて五郎が気がつくと地獄じごくに落ちていました。そこにエンマ
大王があらわれて、五郎にむかい、
 「おまえは、地獄に来る者ではない。早く生きかえれ。もともと
おまえは、あだうちで有名な曽我そが兄弟きょうだいの弟の生まれかわりだ。
おまえは父に孝行こうこうだったから、三回人間に生まれかわることが
できるのだ。ところで、おまえの兄は生前悪いことをして今地獄に
落ちている。しかし、おまえの兄ももともと親孝行なむすこだから、
いつまでも地獄におくのはかわいそうだ。おまえが、この袈裟を
もって行って兄のはかにかけてやれ。そうすると兄も地獄からのが
れて、極楽ごくらくに行けるのじゃ。