本文
さつきころ
- さつきころ
- 1913年(大正2年)
- ブロンズ
高山樗牛の歴史小説「滝口入道」の登場人物を題材にしています。建礼門院の身の回りのこまごまとした世話をする女官で、横笛という女性がモデルになっています。横笛は滝口入道と激しい恋に落ち、入道が父の勧めで出家した後は、その後を追って出家しています。すらりと伸びたきゃしゃな体つきや、意志の強さを秘める凛とした顔立ちが健気な印象を与え、胸を打つ作品です。
田中の作品は男性の、しかも中高年をモデルにしたものが多いのですが、この作品は珍しく若い女性がモデルになっています。このもとになっている木彫作品は、大正2年に作られました。翌年には、この木彫作品とほか3点を第1回院展に出品し、会期中に同人に推挙されています。