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尋牛
- 尋牛(じんぎゅう)
- 1978年(昭和53年)
- 木彫
「尋牛」とは禅の悟道で、自らを探し求めてようやく自分を見つけだすことを表しています。田中は「何年も彫刻を業としているが、いまだに真の彫刻が分からない私自身の姿だ」と述べています。
この作品の原型は、岡倉天心が激賞し所望したほどで、フランスの若い彫刻家に見せたいとも言いましたが、彫りあがったとき天心は亡くなっていました。夫人から「主人があんなに楽しみにしていたので見せてやってください」と頼まれて棺のふたをあけて「先生、今できましたよ」と言ってお目にかけたというエピソードがあります。岡倉天心とのつながりにおいて、田中にとって思い出の深い作品です。