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「平櫛田中の全貌展」
過去の特別展
「平櫛田中の全貌展」
会期
2003年4月15日~6月15日
内容
井原市が誕生したのは昭和28年(1953)のことです。平成15年(2003年)には、市制50周年を迎え、新しい市庁舎も完成いたしましたが、これを記念して「平櫛田中の全貌展」を開催いたしました。
明治5年(1872年)、岡山県後月郡(現在の井原市)に生まれた平櫛田中は、13歳まで井原市で育ちました。その後、広島県沼隈郡の養子先に移り、大阪の小間物屋に丁稚奉公に出るなどして苦労しましたが、やがて彫刻家を志すようになります。明治30年、25歳で上京してからは、高村光雲の門下であった山崎朝雲や米原雲海らと交友しながら修行を続け、「幼児狗張子」など日常身辺に取材した写実的な木彫を制作します。明治40年には岡倉天心を会長に日本彫刻会を結成。天心の指導を受け、「活人箭」「尋牛」など禅の説話をもとにした精神性の高い名作が生み出されました。天心歿後は、横山大観を中心として再興された日本美術院へ同人として参加。大正期には、中原悌二郎、石井鶴三らとともに彫塑研究をおこない、その成果である「烏有先生」「転生」などの傑作を院展に発表しています。その後も日本美術院彫刻部の重鎮として活躍し、肖像彫刻を中心に写実と様式の融合を探求した時期を経て、昭和33年、86歳で、大和絵を生んだ日本人の明快華麗な感情を見事にあらわした代表作「鏡獅子」を院展に発表、その芸術を完成させました。
田中美術館は、この近代彫刻界の巨匠・平櫛田中の偉業を讃え、その作品を永く保存・展示し、文化の向上に資することを目的として、昭和44年(1969年)11月3日、「田中館」として開館しました。当時97歳であった田中はその開館を喜び、自作をはじめ愛蔵品の数々を寄贈しました。昭和54年(1979年)、107歳で歿した後も、遺族や関係者の方々のご尽力により、多くの遺作、遺品を収蔵いたしました。
この展覧会では、代表作「鏡獅子」を中心に、近代木彫の精華ともいうべき名品を集め、田中芸術を回顧するとともに、田中美術館のこれまでの歩みを振り返りました。
主な出品作品
- 「唱歌君可代」(日本美術協会春季美術展覧会)
- 「落葉」(第7回文展)
- 「禾山笑」(第1回院展)
- 「烏有先生」(第6回院展)
- 「転生」(第7回院展)
- 「小田部助左衛門翁像」(第16回院展)
- 「辰澤氏像」(第22回院展)
- 「霊亀随」(第1回帝展)
- 「鏡獅子」(第43回院展)
- 「木村さく女寿像」(第45回院展)など生涯にわたる代表作約80点を展示しました。