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田中ものがたり-9
いろいろな鏡獅子(かがみじし)を作り続けましたが、なかなか気にいったものはできあがりませんでした。
お金を出してくれていた人達が、鏡獅子ができるのを今か今かと待っていました。いつまで待ってもできあがらないので、「田中(でんちゅう)さん。私達はこれ以上お金を出すわけにはいきません。あとは自分の力でやってください。」と言って、お金を出してもらえなくなりました。
お米を買うお金もなく、おかゆを食べてやっと暮らしました。とうとう病気になり、歩くことさえできなくなってしまいました。
のみを持ってたおれた田中さんのまわりには、削りかけの木屑(きくず)がちらばっているだけでした。