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田中ものがたり-5
倬太郎(たくたろう)は、仕方なく、ふるさとに帰ってゆっくり休みました。
きれいな空気をすったり、川で魚釣りをしたりしているうちに、しだいに元気になっていきました。元気になると倬太郎は、また、彫刻家(ちょうこくか)への夢をふくらませていきました。
そこで奈良に行き、古いお寺をまわってたくさんの仏像(ぶつぞう)を見て歩きました。気にいった仏像の前では、いつまでも動きませんでした。
暗くなるまでじっと見ていて、お寺の人に追いだされたこともありました。この頃から倬太郎は、「平櫛田中(ひらくしでんちゅう)」という名前にしました。